突然の解雇・雇止めは法律的に問題ない?
雇止め、いきなり解雇は今に始まった問題ではありません。以前から派遣法拡充に伴い社会問題にもなっていましたが、2020年のコロナ禍で急激に増加しています。
売上が激減しているような状況では避けがたいとも言えますが、だからと言って会社の一方的な通告で突然職を失う方は深刻な状態になってしまいます。
会社、事業所は生き残りをかけて人員整理します、される方もご自身の生活をかけて、しっかり言うべき事は言いましょう。
解雇には4っの種類があります。
●懲戒解雇
●諭旨解雇
●普通解雇
●整理解雇
懲戒解雇は犯罪行為を行ったり、会社に大きな損害を与えた等による解雇です。また、諭旨解雇は、懲戒解雇にあたいするが情状を酌量して、懲戒という厳しい処分は見送る解雇形態で、退職金が支給されたりします。
普通解雇は、会社の就業規則に記載されている解雇要件に従って解雇される形態です。例えば、従業員の非行や能力不足、病気による欠勤等による解雇があげられます。
整理解雇は、業績不振による人員整理、いわゆるリストラです。「リストラ」はよく聞く言葉ですし、大企業も行っていますが、会社の業績が悪くなればすぐに従業員を解雇できるわけではありません。また、解雇するにも決められた手順が必要です。
ここでは、中でも不況、コロナ禍で急増している整理解雇に焦点をあてます。
会社から整理解雇・リストラを言われたら・・
前提として、不況で売り上げが下がったから・・・というだけでは簡単に整理解雇できないということを覚えといて下さい。
会社、経営者から売り上げ落ちて雇うことができないと解雇を通知され、しょうがないなぁ・・と納得される方もおられると思いますが、過去の裁判での争いで裁判所は、整理解雇する場合の必要な要件を4っ示しています。
1.人員削減の必要性
2.解雇回避の努力義務
3.解雇する人員選定の合理性
4.解雇手続きの相当性
2の回避の努力をしたの?については、例えば、経営者、管理職の給与を下げた? 賞与は? 使わない不動産や動産等は処分した? 他方で新しい派遣社員を雇ってない? 雇用調整助成金は申請した? 等々が問われ、解雇は最終手段だとしています。
3、4は、なぜ、あなたが選定されたかの合理的な理由や解雇までの手続をきちんと説明することを求めています。
不況を理由に、安易に取りあえず人員整理、この際に気に入らない従業員をクビ等々もあり得りえます。
上記4要件をきっちり覚えなくても良いですが、解雇するにはそれなりの理由が必要、売上が下がっただけでは簡単にできないということを覚えといて下さい。
以上をふまえて、会社から整理解雇を通知されたらどうするか?を考えます。
受け入れるか、受け入れないか・・で対応が異なってきます。
解雇を受け入れるケース:
会社からの解雇通知を受け入れずに戦い続けることは容易ではありません。多くは最終的に受け入れることになりますが、不況、コロナ禍と言えども会社側の都合で解雇されるので、言われるがままではなく、自身の今後の生活のためにも主張できることは主張しましょう。
まず、解雇する場合、会社は少なくとも30日前に解雇予告をするか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当て)を支払わなければならないと労働基準法20条で規定されています。(4ヶ月以内の季節的期間従事者等々の除外規定あり)
突然、解雇を言い渡されて何の補償もない・・は違法です。そのような場合、30日分の給与相当額を請求しましょう。
退職手続きで注意する点として、解雇を言い渡したのに関わらず、退職届に署名を求める会社があります。
形式上、解雇ではなく自主退職としたいのだと思いますが、基本的に署名すべきではありません。
失業給付金の支給開始日が遅れるおそれがあり、また、あとあと何かでもめたとき、会社側に自主退職を主張されることになりかねません。
解雇(会社都合)の場合、基本、約1ヶ月後から失業給付金を受け取れますが、自主退職(自己都合)では約3ヶ月後の受取になります。
給付期間も解雇は最長330日、自主退職では最長150日になります。
また、先に述べた解雇予告手当ては解雇での規定なので、自主退職では適用されません。うっかり、退職届に署名してしまうと、後で解雇予告手当てを請求しても自主退職扱いを盾に支払いを拒否されるかもしれないので、安易に署名することは避けて下さい。
会社によっては、退職届に署名することを条件に退職金を割増しする等の提案をします。上乗せされるメリットと自主退職のデメリットをしっかり比較検討して対応しましょう。
解雇を受け入れないケース:
会社、使用者と不当解雇として戦うことになります。戦い方は分かれます。
1.裁判所に労働審判を求める。
労働審判手続では調停が試みられ,調停がまとまらなければ,事案の実情に応じた解決をするための判断(労働審判)をします。判断に不服あれば訴訟に移行します。
2.仮処分の申立
何の仮処分を求めるかは当人次第です。従業員としての地位の保全、賃金の仮払い、退職強要の禁止等々が考えられます。
3.労働基準監督署に申立てる。
労働基準監督署の場合、明確な法律違反がないと動いてくれないのが現実です。
解雇については、労働基準法で「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は労働基準法違反となりますが、どの状態が相当でないか労働基準監督署は判断しません、というか判断できません。裁判での争点であり、裁判所が判断することになります。
よって、労働基準監督署の介入はあまり期待できませんが、会社が明確な労働基準法違反をしている場合もあるので、相談してみるのも一つの方法です。
注意点!:
不当解雇を会社と争う場合、訴訟に移行するとかなりの時間がかかります。その間、復職できるかどうか分からない状態の時間が続き、再就職の活動もままなりません。
復職できれば良いですが、できたとしても一度訴えた会社で働くのも精神的に容易ではありません。
現実的には、慰謝料、退職金、解雇予告手当等の金銭での和解が落としどころとなります。もちろん、徹底的に復職を求めることも可能です。
雇止めにあったら・・
雇止めとは、有期雇用を更新していたのを突然やめることです。更新しないことで失職することになります。
”雇用期間は1年、期間満了で契約終了です。今回は更新しません。以上”と言われてしまうと、そもそも1年契約だから仕方ない・・と思われる方もおられるかもしれませんが、受け入れる前にご自分が今まで働いてきた状況を振り返って下さい。
”反復更新の実態などから、実質的に期間の定めのない契約と変わらないといえる場合や、雇用の継続を期待することが合理的であると考えられる場合、雇止め(契約期間が満了し、契約が更新されないこと)をすることに、客観的・合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められないときは雇止めが認められません。従前と同一の労働条件で、有期労働契約が更新されることになります。” (厚労省HPより抜粋)
分かりずらい言い回しですが、長期間更新を繰り返し、無期雇用のような状態にある場合や会社との対やりとりで次も当然更新されると期待できるようなときは、誰もが納得できる理由がないと雇止めできないとされています。この場合の雇止めは、期間満了ではなく解雇と同様に扱うことになります(解雇に関する法理を類推)。
正社員と同じ仕事をしている、契約更新手続が事実上形骸化している、会社から「次もお願いね」等の更新を期待させる発言があった場合などは、厚労省の言う雇用継続を期待することが合理的であると考えられます。
上記厚労省の見解を引用し、同一条件で有期雇用は更新、継続されるべきと主張できます。ただし、社会通念上相当であれば雇止めは可能となります。その場合の雇止めは、判例により解雇に類推されるとされているので、解雇予告手当の請求を検討しましょう。
また、有期労働契約でも3回以上契約が更新されている場合や1年を超えて継続勤務している人について契約を更新しない場合、使用者は30日前までに予告しなければならないとされています。
ただし、残念ながら解雇予告と異なり、厚労省が定めた基準で法律ではないので、予告なかったとして予告手当を請求することはできません。